アメリカのTIME誌が毎年選出する『世界で最も影響力のある100人』(The 100 Most Influential People)の2016年度版の一覧が公開された。
今年の100人には、アメリカの大統領候補者選びで連日注目されている共和党の不動産王のトランプ氏や共和党のクルーズ議員、そして民主党のクリントン前国務長官やサンダース上院議員などが選ばれている。
他はミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家顧問が指導者部門で、北朝鮮のキム・ジョンウン(金正恩)第1書記が否定的な影響を及ぼす指導者として6年連続選出された。
同じ指導者部門で選ばれたが、その意味合いは大きく違うようだ。
日本からは芸術家の草間彌生さん(87)が日本人としてはただ一人選ばれた。
草間彌生さんは絵画や彫刻を作成しており、水玉模様や網模様などの同一モチーフを画面一杯に反復する作品を多く手掛けている。
2013年の『24時間テレビ36愛は地球を救う』で嵐の大野智さんと共同でチャリティTシャツを創作した事は記憶に新しいだろう。
草間さんについてファッションデザイナーのマーク・ジェイコブス氏は、
「彼女は芸術の世界で常に急進的で革命的なことを成し遂げてきた。これからも成長し変化し続けるだろう」
と評価している。
そんな草間さんだが、実は統合失調症を患っており、その半生は大変なものだったようだ。
草間彌生さんの半生
草間彌生さんは1929年に長野県松本市で生まれる。
実家は種苗業を営んでおり、裕福な家庭に育った。
幼いころから草や花などをスケッチし、絵を描く事にに親しんできたという。
しかし、少女時代に統合失調症を発症してしまう。
統合失調症は、陽性と陰性に分かれ、陽性は幻覚や幻聴、妄想の症状が現れ、陰性は自閉や無感情の症状になるという。
草間さんは陽性だったようで幻覚や幻聴を繰り返し見るようになってしまう。
統合失調症の人は、時に絵を描くことよって自分の病気と闘おうとするという。
草間さんも同じで、幻覚から逃れるために自分が見える物を描き続けた。
草間さんの描く絵に水玉やドットが多いのは、これは彼女にとっての儀式の一環で、耳なし芳一が悪霊から逃れるために全身にお経を書いた事に影響を受けている。
そんな苦しみの中、1945年「第一回全信州美術展覧会」に並み居る顔ぶれの中から若干16歳で入賞する。
その後も進学し、絵を学び続けたが旧弊な日本画壇の日本画に失望し実家に帰省する事となる。
実家では寝食を忘れるほど日々絵に没頭し、個展を開くなどした彼女の知名度は徐々に上がっていく。
1957年、美術評論家の瀧口修造氏の紹介で草間さんは渡米を決意。
活動の拠点をニューヨークへ移し、ボディペインティングやハプニングなどで話題性を作りながらあらゆる賞を受賞する。
また2014年にはあのルイ・ヴィトンとのコレボレーションも実現し、世界的に話題になっている。
子供の頃から水玉や網目が増殖し、かぼちゃや花が頭に語りかけてくるという草間さん。
その症状は今でも続いているという。
草間さんが頭の中で何を見ているのかは我々は知る事ができない。
しかし彼女の作品に触れる事で、ほんの少しかも知れないが、彼女の見ているものを共有できているのかもしれない。
ぜひこれからも世界中に影響を与える作品を描き続けもらいたいと思う。