ここ滋賀県でCoCo壱番屋のフランチャイズを11店舗展開する(株)アドバンスが滋賀県庁の敷地内でカレーの出張店舗を開いていたが、それが今月10日で打ち切りになる事となった。
打ち切りの理由は出張店舗が県庁の敷地内にあり、「県有地は県と密接な関係を有する公共団体が公共活動のために使うもの」と定められているため、県側が特定の企業にだけ敷地を貸す事は出来ないという。
理屈はわかるが、それなら何故今まで貸していたのだろうか?
県庁側の説明によると、もともとは「イベント的なもの」として認めていただけであり、継続的に貸すつもりではなかったという。
それを受けアドバンスは、県庁内にある生協にお弁当として置いてもらおうとしたが「サービスの低下は避けられない」として出店をあきらめた。
しかしこの出張店舗、実は普通のカレー屋さんとはちょっと事情が違う。
ここで販売されていたのはなんと鹿肉を使ったカレー。
それは滋賀県でも問題になっている「獣害被害」に対する新しいのアプローチだったのだ。
(獣害についてはこちら↓)
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鹿害(ろくがい)とは
滋賀県は鹿が農作物を食い荒らす「鹿害(ろくがい)」に悩まされていた。
鹿害のピークは2010年度で、その時の被害総額1億7000万円にものぼった。
その年の鹿の推定生息数は山間部を中心に最大6万7000頭ほどで、生態系維持のために必要な数は8000頭といわれている。
そのため県は猟友会などと協力し鹿の駆除に乗り出した。
捕獲された鹿は殺処分され山中に埋められるのだが、それでは命の無駄遣いになるという事で09年に獣肉解体処理施設を開設し、レストランなどで鹿肉の販売が開始された。
鹿肉って食べられるの?どんな味?
日本ではあまりなじみのないこの鹿肉、実は欧州では高級レストランなどで振る舞われる高級食材だ。
主にステーキや煮込み料理に使われているという。
高タンパクで低脂肪、鉄、ヘモグロビン、ミオグロビンなどを多く含むため、日本では「薬肉」として食べられてきた。
味は「硬くてにおいがキツイ」といわれているが、血抜きなどの処理をちゃんと行えば肉は柔らかくにおいもキツくないそうだ。
前に一度狩ったばかりの野生のイノシシ肉(もちろん血抜き済み)を分けてもらった事があるが、養殖のイノシシ肉とは全く別物のように脂がのって美味しかった事を思い出す。
鹿肉の世界最大の消費国はドイツで、4万~4万5000トンを消費し、しかもその半数は輸入に頼っているという。
ならば鹿肉を輸出すればいいのではないか?と考えるかもしれないが、まず鹿を捕獲する猟師の数が少なく安定供給できない事、価格が高い事(鹿肉1㎏あたり2000円位)輸出コストが掛かりすぎる事(他、様々な国の規定のクリア)などから現実的ではないだろう。
他国じゃ高級食材になる鹿肉を大半埋めるとは、もったいない話である。
CoCo壱番屋(アドバンス)の貢献
そんな扱いの難しい鹿肉に目を付けたのが(株)アドバンスだった。
アドバンスは地元の猟友会と協力し、滋賀県限定の独自メニューとして鹿カレーを全店舗で提供。
カレーに入った鹿のもも肉は、鶏肉のような味だという。
アドバンスの岡島洋介社長は
「鹿害で苦しむ農家の役に立てればと、獣美恵堂に声を掛けた。安全面や調理法に不安はあったが、試行錯誤して商品化にこぎ着けた」
と当時語っていた。
そして2015年2月から県庁前に出店、週(2週)に一度滋賀県産のシカ肉が入ったカレーを販売し好評を得ていたのだが、この度の県庁の要請により閉店する事となった。
今回の県庁前の出店取りやめに対してアドバンスの川森慶子・総務課長は
「県内の猟師の負担を減らすべくシカ肉を広めようと始めたことなのに残念。採算は取れておらず、決して営利目的ではなかった」
と肩を落としたという。
もちろん県庁職員にもこの鹿カレーのファンは多く、職員の一人は
「せっかく民間から良い取り組みを提案してもらったのに、県庁として応えられないとは本当にもったいない」
と憤っていたという。
県庁前にこのような店があれば鹿害問題の良いアピールにもなると思うのだがやはり決まりは破れないのだろう。
県庁前での出店は10日が最後となるので、気になる方は行ってみてはどうだろうか。