みなさんはおもちゃ病院というものをご存知だろうか?
おもちゃ病院とは、壊れてしまったおもちゃをボランティアのおもちゃドクターが(原則)無料で修理してくれるサービスだ。
依頼者の目の前で修理をしてくれるので、直っていく過程を見る事ができとても新鮮だ。
場所は児童館やトイザらスなどが多くなっている。
おもちゃ病院は全国にあるので興味がある人は自分の家の近くにないか探してみてはいかがだろう。
※問い合わせ先は施設やドクターの自宅などが多いので、電話を掛ける際はおもちゃ病院に関する問い合わせだとお伝えください。
こちらのおもちゃ病院、おもちゃをスムーズに直すためのいくつかの注意点がある。
それは、
・おもちゃはいつ、どの様なときに動きがおかしくなったのか?
・普段はどのように動いていたのか?
をきちんと伝える事。そして
・おもちゃの説明書や箱を持参する
・おもちゃの部品や破損個所があった場合はなるべく持ってくる
などだ。
さらに修理を受け付けていないおもちゃもあるので気を付けよう。
(※修理を受け付けてないおもちゃ)
・エアガンやガスガン、電動ガンなどの銃類
・浮輪や浮袋、子供用のビニールプールなどビニール製品
・AC100Vに直結するおもちゃ
・骨とう品や工芸品のような価値のあるもの
・法的に規制のあるもの
ぬいぐるみや人形はシルエットが変わってしまうため大変治療が難しいおもちゃだが、場所によっては治してもらえるようなので事前に電話で聞いてみよう。
おもちゃ病院は現在全国に約570ヵ所あり、まだ増え続けているという。
修理はボランティアにも関わらず、何故おもちゃ病院は増え続けているのだろう?
それはボランティアをする人の、様々な思いがあった。
何故無償でおもちゃの修理をするのか
おもちゃ病院伊都国の代表、波多江 保彦さんは福岡市を中心に、自分の孫世代の子供たちが持ってきたおもちゃを無償で修理するおもちゃドクターだ。
東京の電気メーカーのエンジニアとして働いていた波多江さんは仕事の傍ら、すでにおもちゃ病院のはしりのような事をしていたという。
波多江さんがおもちゃドクターになったきっかけは、娘さんが持ってきた鳴かない電子小鳥だという。
「子どもが高校のクラブ活動でキットを使って電子小鳥を作っていたんですが、『うまく鳴かない』と持ってきたんです。
分解して電子回路設計上の原因が分かったので、家にあった部品を使って修理しました。
“治った”小鳥が学校で友達の注目を集めたらしく、鳴かない電子小鳥が5羽も6羽も集まってしまって」
そう楽しそうに語る波多江さん。
娘さんもさぞかし嬉しかった事だろう。
集まった小鳥も全て修理したそうだ。
会社を退職後、生まれ育った糸島に戻った波多江さん。
おもちゃドクターを続けるのは1人では難しいだろうと思っていたが、そんな波多江さんを決心させたのはお孫さんからの一言だった。
「おじいちゃんは、おもちゃのお医者さんだね」
それは孫のおもちゃを修理してあげた時の言葉だったそうだ。
娘から孫へ。
世代を超えた思いを受けた波多野さんはそれから仲間を探しはじめ、同じく機械いじりが好きな4人でおもちゃ病院伊都国を立ち上げたという。
(左・波多野さん)
おもちゃ病院では「子どもたちの目の前で修理すること」と「完全に元通りにならなくても『また使えるように工夫する』こと」の2点を特に大切にしているという。
その理由について波多江さんは、
「それぞれのおもちゃには、『おじいちゃんに買ってもらった』『サンタさんにもらった』なんて思い出があるものです。元通りでなくても、また使えるようになればまた愛着が湧いて、思い出を捨てなくて済むでしょ?」
と胸の内を語る。
無償で修理を行うことについては、
世の中に随分お世話になって生きてきました。だからこそ今、少しは社会にお返しするべきなんじゃないかと思っています。誤解を招く言い方かもしれませんが、定年後はゴルフや旅行などを楽しむ生き方もあると思います。でも、それだけではなく『いかに自分がいきいきと暮らすか』の追求が、元気のもとだと思うんです。それから、ボランティア団体もひとつの『組織』です。続ける原動力は何かと言われれば、うまく説明できないですが、ビジネスマンの本能みたいなものでしょうかね。企画を立てて組織で動いて成功する喜びというのは、会社勤めのときからずっと変わらないもののような気がします」
と、いつまでも現役で生き続けたいというパワーを感じる。
ボランティアをする事によって社会と繋がっていたい。そのような思いもあるのかもしれない。
波多江さんについて詳しく知りたい方は (福岡県70歳現役応援センター) まで。
おもちゃのスーパードクター
おもちゃ病院は基本「日本おもちゃ病院協会」に属しており、協会では全国で活躍するおもちゃドクターの育成などもしている。
現在約1200名ほどいるおもちゃドクター。
なんとその中には凄い経歴を持つ、スーパードクターもいるのだ。
めんたいワイドによると、福岡市中央区の中央児童会館あいくるでは、月に一度ボランティアのおもちゃドクターが集まり、持ち込まれた様々なおもちゃを修理してくれるという。
そこでボランティアをしている長瀬敏明さんは、スーパードクターだ。
自宅の隣にあるプレハブ小屋には、所狭しと機材や材料が並んでいる。
ここが長瀬さんの作業場だ。
長瀬さんはここで画像の動きを認識する装置(ビデオセンサー)を作っているという。
このビデオセンサー、設定した大きさにだけ反応するというセンサー機能と屋外でも耐えれる強い耐久性を持った優れものだ。
さらにこのセンサーの取引先が凄いのだ。
そう、それは宇宙航空のあのJAXAだ。
なんと長瀬さんは種子島の発射場の自動監視システムを作っているという。
その他にも国家石油備蓄基地や海上保安庁など、名だたる組織ばかりだ。
そんな長瀬さんは、何故おもちゃドクターをしているのかというと、
おもちゃも好きだからだという。
「ああいう電子回路を見ると、どういう風に作られているのかというのがやっぱり興味津々で、すぐバラしてみたくなったり
これはもうわたしの人生の中で最後のライフワークとしてずっとやっていけるんじゃないかなと」
そう語る長瀬さんの目は、子供のようにキラキラしていた。
壊れた物を甦らせてくれるおもちゃ病院。
壊れたからといってすぐ捨てるのではなく物を長く大事に使う大切さを教えるために、一度『おもちゃ病院』を覗いてみてはいかがだろうか。