国を守るため、そして災害などがあれば国民を助けるために
日々尽力してくれる自衛隊の方々には頭が下がる思いだ。
そんな自衛隊の幹部自衛官を養成する大学「防衛大学」で今、
異変が起きているという。
なんと「任官拒否(辞退)」をする者が昨年の
2倍近くに上ったという。
昨年の任官拒否は25名、今年は47名(予定)となっているの
だが、これを凄く増えたと取るかどうかは皆さん次第だ。
その主な理由は景気が回復し、民間企業の求人が
増えたためだと言われている。
ところで「任官拒否」という言葉、聞き慣れない方もいると思う。
簡単に言うと自衛官になる事を拒否するという事だ。
それが何故問題なのかを説明するにはまず、防衛大学というものを
知ってもらう必要があるだろう。
防衛大学というのは横浜県の横須賀市にある大学で
自衛官のエリート幹部を養成する学校だ。
合格後は特別職国家公務員という扱いになる。
そのため「受験」ではなく「採用試験」となり、
試験(受験)に掛かる費用は無料だ。
そして、給与も支払われる。
その金額はひと月約11万円。
年に2回、期末手当(年約38万)も出るという。
学費も無料で給料も出るなら通ってみたいと思う人も
いるだろうが、入るのも難しければ、入った後も過酷な
訓練に見舞われる。
そんな防衛大学の一日とはどういうものだろう。
防衛大学の一日は、ラッパの音から始まる。
朝の6時30分、起床を知らせるラッパが鳴る。
ラッパが鳴るまでは布団から出ることはできない。
そしてひとたびラッパが鳴ると、急いでシーツをたたみ、
乾布摩擦に向かう。
なんとそれを5分で行わなければならないのだ。
しかもシーツのたたみ方が悪いとシーツを窓から
放り投げられるという。
乾布摩擦が終わると清掃、朝食となるが、清掃の順序は
細かく決められており、その順序を間違うと怒られてしまう。
その後国旗掲上、朝礼があり、それが終わると課業行進をし、
ようやく授業となる。
授業も単位認定が非常に厳しいため、皆真剣そのもの。
そして全ての授業が終了後すると、今度は校友会(部活)の
活動となる。
体育会系の部活が多く、自衛隊らしい銃剣道部や射撃部などもある。
校友会が終わると風呂、夕食となるが1、2年生は平日はシャワーを
使う事は許されていない。
20時から22時10分までが自習時間となり、22時30分には消灯だ。
それ以降は(基本)自由行動はできない。
そして1年生の間は冠婚葬祭など、特別な理由が無い限り
外泊できない決まりとなっており、プライベートの時間は
ほぼ無いと思っていいだろう。
訓練もまた厳しい。
遠泳訓練では最終日には8㎞泳ぐのだが、食事も泳ぎながら
とらなくてはならないので教官がボートからばらまく金平糖や
乾パンを立ち泳ぎなどで食べなくてはならないという。
そして2学の時となるとカッター競争が待ち構えている。
2㎞の距離をオールを使って全力で漕がねばならず、手の皮や
お尻の皮が剥けてしまう事もあるようだ。
それを乗り越えてこその幹部候補という事だろう。
3年時は10Kgの装備を背負っての7Kmのコースを走る
タイムレース。
4年生大学最後を飾るのは持続走競技と棒倒しだ。
これらの訓練・競技は、体を鍛えるとともに、協力する事の
大切さやどのような過酷な状況になっても耐えうる精神力を
作るためだと言われている。
そして卒業後、大半の生徒はそのまま自衛隊に任官するのだが、
一部それを拒否する者がいる。
これほどの学業・訓練を乗り越えたのになぜ任官拒否を
するのか。
大きく分けると理由は二つあるようだ。
一つは在学中に自分は自衛官に向いていないと悟った為、
もう一つは初めから自衛官になるつもりなどなく、
学費が掛からない(そのうえ給料がもらえる)から
防衛大学に行っただけという者だ。
確かに日本では職業選択の自由が認められている。
だが彼らに掛かる学費や給料の財源は国民の税金だ。
タダで大学に行けるからという理由で入学されては
国民も納得出来ないだろう。
では学費を返還してもらえばいいかというと、これにも少々
問題がある。
防衛大学出身者といえば幹部候補生だ。
時には命を掛けなくてはならない職業に、お金を返還するの
が嫌だという理由でやる気も無い者に上司になられては部下は
たまったものではない。
平成24年に防衛大学校卒業生に対する償還金の新設を含んだ
法案が提出されているが、審議未了で廃案となっている。
(医学部の場合のみ返還義務がある模様)
これに対してネットの反応は
・拒否は自由だけど学費払わせろ
・土壇場で逃亡されるよりマシ
・やる気のない奴を篩にかけたと思えばいいんじゃないか。
残念ながら幹部候補生学校を卒業しても1,2年でやめていくのも
結構いるよ。個人的には全員任官して欲しいけど、別な道で社会
貢献してくれればいいかな。
など、授業料の問題や志を気にする人が多いように感じる。
今より景気が良くなれば、民間企業に行った方が良いと考える学生が
ますます増えるかもしれない。
自分は何のために防衛大学へ行くのか、今一度考えてほしい。