イギリスが国民投票によりEUから離脱する事が決定して2週間近く経とうとしている。
このEU離脱によって、一体どのような事が起きるのだろう?
7月4日(月)放送の朝日テレビ系列の『橋下×羽鳥の番組』で徹底討論されていたので、その内容をまとめてみました。
目次:
・EUの問題点・EU離脱派の意見・EU官僚の問題・EUのしくみ
・離脱派の筆頭格ナイジェル・ファラージ氏とは?ファラージ氏にインダビュー
EU離脱による日本経済への影響は?
まずEU離脱による日本経済への影響だ。
離脱直後から日経平均株価は歴代8番目の下げ幅を記録した。
さらに急激な円高になり、1ドル=99円台までとなった。
一部ではリーマンショック並の不況になるとの予測が出ている。
現在は国民投票前の基準に戻りつつあるようだが、経済ジャーナリストの萩原ひろこさんはこれから大変な事になるかもしれないという。
それは、
・円高で日本が輸出不審に陥り、経営者が給料を上げづらい環境になる。
・雇用面では経済の不安から正規雇用が減り、派遣が増える。
という可能性だ。
中でも一番危惧されているのは年金なのだという。
EU離脱によって日本の年金はどうなる?
昨年度の年金の運用損は約5兆円の損失がでているのではないかといわれている。
(中長期的には問題ないといわれている)
しかし、今回のEU離脱によって、5兆円どころではない、10~15兆円の損失になるのではないかと萩原さんはいう。
日本の年金は、運用資産の約2割が海外株式だ。
EU離脱の影響により株が不安定になると、日本が損をし年金がすごく減ってしまう可能性があるのだ。
そうなると年金の支給年齢が67歳に引き上げになったり、保険料が上がってしまうかもしれないと萩原さんはいう。
しかし橋下さんはそれは違うと反論した。
日本の年金の積立金は総額1000兆円。
うち約140兆円を積立金として運用し、さらにその内の約2割が海外投資にまわされているのだ。
(年金制度自体は変えていかなくてはいけないと思うのは前提として)つまりちょっと残ったお金の部分が1割か2割下がった程度で年金には全く影響しないという。
ようするに例え5兆~10兆円の損失が出たとしても、20年~30年に渡って解消すればいい問題なので大したことではないという事だそうだ。
メディアの報道の問題
ちなみにEU離脱問題についてジャーナリストの森永卓郎さんは、一番の問題は日本のメディアなのだという。
森永さんはEU離脱の日に色んなマスコミからコメントを求められ「(EU離脱は日本のとって)大した影響ないですよ」と答えたが、どのメディアからもボツにされたという。
自分達の求めるコメント以外は無視する姿勢のようだ。
そして橋下氏も日本のメディアの報道に違和感を感じたという。
橋本氏がイギリスに取材に行って感じた事は、イギリス国民の離脱をするかしないかの選択に対する真剣さだったという。
しかし取材を終え、日本に帰ってくると何故か日本の新聞やテレビは「国民投票は良くなかった」「国民が一時の感情に流されて離脱に投票した」という報道が多く流れていた。
有権者の方たちもメディアやネットや勉強会を通じてこの問題について真剣に取り組んでいた。
その上でしっかり判断して投票した結果の筈なのに、「この国民投票はポピュリズムだ」と批判する日本のメディアや有識者に対して橋本氏は怒りを覚えているようだ。
そして7月4日現在再投票の懇願数が400万を超えた事については、離脱派が後悔してやりなおして欲しいと言っているのではなく、残留派の人がもう一度やれと言っていいるだけだと主張した。
そしてイギリスの報道はハッキリと残留支持に傾いた報道をしていたという。
そんな中離脱派が勝利したという事は、「イギリスの政治が完全に失敗したという事」だと橋下氏は言う。
どうやらマスコミが望む結果の時は「国民はすばらしい選択をした」といい、マスコミが望まない結果の時は「国民は雰囲気に流された」という報道をしているようだ。
困ったものである。
国民投票の仕組み
さて、イギリスでは国民投票は3回めとなるのだが、国民投票の仕組みとは一体どのようなものだろう?
イギリスは今回で国民投票3回目。
基本的には日本もイギリスも間接民主制で、国民が選んだ政治家により物事が決められる。
一方今回の国民投票は直接民主制と呼ばれ、国民が政治家を通さずに直接事案を決定することができるものだ。
ちなみに日本では憲法改正の時に国民投票が実施されるが、これまで一度も行われていない。
国民投票は必要か?
国民投票について橋下氏は「議会制民主主義を行う政治体制においては絶対に必要」と語る。
普段は専門家や政治家がしっかり議論して決めてもらってもいいが、本当に肝心で重要な問題になれば国民の意志と離れていないかを確かめる方法として国民投票は必要なのだという。
しかし逆に森永氏は必要ないという。
なぜなら日本は選挙の時に、政治家か公約で何をするのかををハッキリと示しているので、選挙を通じてどっちにするのかを決めればいいのではないかという意見だ。
だから選挙の時には人を選ぶのではなく政策を選ぶべきだという。
そして木村太郎氏は、代議員制は期限付きの独裁政治であり、今回の国民投票はそれに対する「NO」であったと推測。
よって安全面としての国民投票はあるべきだとの意見を語った。
EU事情に詳しい庄司克広さんは、過去のナチスドイツのように国民投票を悪用されないように、国民投票の発議自体も議会ではなく国民ですべきだという。
様々な意見があり、非常に考えさせられる問題だ。
国民投票の問題点?
しかしそれらとは別に、国民投票には問題点があるという。
今回のEU離脱交渉は通告から約二年間の猶予がある。
実はこの国民投票には法的な拘束力は無く、イギリス議会は「EUから離脱しない」という選択する可能性もあるのだ。
さらにメディアは国民投票をした事によってイギリスが二分されてしてしまった、国民投票はすべきではなかった、と報じている。
そてに対して橋下氏は、そもそもが意見が二分されていたものに蓋をしていただけで、国民投票によって二分されたわけではないのだという。
EUの問題点
そもそもこのEUという構造自体はどうなのだろうか?
そこにはある問題点があるという。
EU離脱派の意見
EU離脱派のイギリス人の方は、なぜEUからの離脱を望むのだろう。
番組内の取材では、
「イギリスからEUに流れていくお金が問題。しかも僕らは国をコントロールできない」
「外から命令されるのはもう国じゃない」
「政治家が決めることかもしれないけど任せてっられない。やぱっり大事な問題だから政治家ではなく国民が決めるべき」
と語っている。
国がEUの管理下に置かれている事に非常に憤っているようだ。
EU官僚の問題
さらにEUの官僚の問題もある。
EUの本部はブリュッセル(ベルギー)にあるのだが、その周辺の高級レストランではEUの官僚が優雅に食事をしているという。
以前からEUを運営するEU官僚の厚遇が非難されていたのだ。
EUは民主主義のしくみではないという橋下氏。
そんなEUのしくみとはどのようなものなのだろう。
EUのしくみ
EUは4つの機関で成り立っている。
1.欧州理事会
2.EU理事会
3.欧州理事会(EU市民)
4.欧州委員会(EUのエリート官僚)
この4つだ。
ルールや規制を決めるのは全て欧州委員会(EU官僚)だ。
EUの市民が選出した欧州議会じゃないので、これが非民主的だと批判されている。
EUの大統領やEU官僚の選出方法は分かっておらず、一体誰が選んだのかわからない人間が仕切っている、という国民にとっては理不尽な状態なのだ。
離脱派の筆頭格ナイジェル・ファラージ氏とは?ファラージ氏にインタビュー
当初この国民投票は残留派が有利とされていたが、僅差で勝利したのはEU離脱派だった。
そんな離脱派の筆頭格が英国独立党党首のナイジェル・ファラージ氏(52)だ。
ファラージ氏はEU離脱を25年かけて訴え続けていた。
投票前、EUに支払う資金をイギリスの国民医療サービスに使うと公言。
しかし離脱決定後にあの発言は間違いだったと訂正し、残留派の逆鱗に触れたという。
そんなファラージ氏と橋下氏は投票直前に緊急対談していたのだ。
その対談の内容はこうだ。
Q 主張を伝えるために重視していることは?
A 各選挙区でイベントを盛り上げ、メディアに会うことです。離脱派のメッセージを広める起爆剤になればと考えています。
Q これだけおおきなレバレンダムを国民が決めることに不安はありませんか?
A この国の政治家は全人口から考えればほんの限られた集団からしか出てこれない。様々な問題点において国民の意見が反映されていないのです。だから場合によっては国民投票を実施したほうがいいと考えています。
Q どのような結果がでようとも、国民の判断に従いますか?
A それは私達が勝てばうけいれます。もし負けたら議会はもう一度投票のチャンスは与えてくれないでしょう。ですから何が起きようとも今回の結果は受け止めないといけないでしょう。
Q 今回離脱した後どうなるかという青写真がちょっと不明確なようにおもえるんですが
A EUの貿易圏に加入していないといけないという考えは時代遅れではないかと思っています。世界各国と二国間貿易協定を結んだほうが柔軟性に富んでいる。その典型的な例がシンガポールでしょう。小さな国が自国のために交渉し、世界各国と素晴らしい関係を築きあげました。
イギリスをシンガポールの大規模バージョンにしたいと思っています。
Q 過去の議論では残留はが圧倒的多数と思われていたが、離脱の意見が大きくなったのは何が要因だと思われますか?
A 国民の我慢が限界に達したからです。浮世離れしたエリート(EU官僚)に統治されることに。様々なものが奪われました。パスポートですらEUと書かれています。我々が望むのは普通の国。あなたの国のように。法律や国境を自国で決める、私達もそうしたいだけ。普通に戻りたいだけなんです。
ファラージ氏の心情は非常に伝わってくるが、理想と現実の間で苦しんでいるのかもしれない。
そんな中、イギリス人を父に持つハリー杉山氏は、国民投票の結果に唖然とブログに書き込んだ。
その理由は離脱派筆頭格のファラージ氏のウソに国民が騙され、流されたのではないかというのだ。
しかし木村太郎氏はムードに流されたのではなく、反ロンドン(エリート)、反グローバリズム、反移民によって起こった結果だという。
これからの世界情勢はどうなる?
国民投票の当日、イギリスのスコットランドになぜかアメリカの大統領候補のドナルド・トランプ氏がいた。
トランプ氏はそこで、「オバマ、クリントンは残れ(残留)と言ったが、みんな(イギリス)が決めるべきでわたしは残れとも出ろ(離脱)とも言っていない」
そう言ってトランプ氏は、開票日のスコットランドで選挙運動をはじめたという。
この話はこれからのアメリカの政治に影響を与えていくのではないかと木村氏は予測する。
トランプ氏が国民投票の日にスコットランドにいたのは偶然で、あそこには自分のゴルフ場があり、そのゴルフ場の記念日だからというのが理由なのだという。
しかしそこに行ったらなぜかアメリカの記者が2、30人いて、衛星中継のパラボナも張っていきなりテレビの中継が始まった。
翌日のニューヨーク・ポスト(唯一トランプ氏を支持している新聞)が一面に「POWER TO THE PEOPLE!」(今回は国民のパワーで決まった)と掲載したという。
これらの事からトランプ氏は、イギリスのEU離脱がアメリカの大統領選にも適用されるのではないか、との期待があるようだ。
もしかしたらEU離脱のうねりはイギリスだけでなく、他の国々の投票行動にも影響を及ぼすのかもしれない。
国民が自ら選べる事を示した今回の国民投票。
日本も憲法改正を国民投票にかけるか議論されているが、マスコミの言うことは必ず正しいと完全に信じるのではなく、ちゃんと自分たちで考えてから投票に行く事ができれば、良い世の中に変わっていくのかもしれない。