大口病院の点滴中毒死で今注目されている界面活性剤。
普段あまり耳にされないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、実はこの界面活性剤は私たちの身近に沢山存在しているのです。
そんな界面活性剤について調べてみました。
界面活性剤とは?
多くの石鹸や洗剤などを開発・販売している花王のHPによると、
界面活性剤は、界面(物質の境の面)に作用して、性質を変化させる物質の総称です。 構造としては、1つの分子の中に、水になじみやすい「親水性」と、油になじみやすい「親油性」の2つの部分を持っています。 この構造が、本来、水と油のように混じり合わないものを、混ぜ合わせるのに役に立ち、汚れを落とす洗浄の働きをするのです。
と書かれていました。
少しわかりにくいですが、要するに水と油のような混ざりにくい物質(極性物質と非極性物質)を均一に混合する(界面活性作用)ために必要な物質のようです。
これだけ見ると特に問題なさそうに思えますが、実はこの界面活性剤には毒性があり、多量に摂取すると中毒を起こし最悪死亡してしまう事もあるというのです。
界面活性剤の毒性
界面活性剤が体に入るとなぜ中毒を起こすのでしょうか?
界面活性剤には『陰イオン界面活性剤』と『陽イオン界面活性剤』に別れています。
『陰イオン』系は主に、日常生活の石鹸やシャンプー、食器用洗剤などの家庭用洗剤に使用されています。
対して『陽イオン』系は洗浄剤や静電気防止剤、柔軟剤などに使用されています。
陽イオン系は陰イオン系より毒性が強くなりますが、家庭で使用されるものについては濃度を抑えられているようです。
そんな界面活性剤には蛋白凝固作用があるため、消化管の粘膜を腐食させてしまいます。
さらに細胞膜機能を低下させ、血管の透過性を亢進し、循環血漿量を減らしてしまうのです。
界面活性剤中毒症状
事故や誤飲で体内に入ってしまった場合、少量なら特に問題ないのですがもし大量に摂取してしまった場合、下記のような症状などが現れます。
・消化器粘膜の損傷
・筋力の低下(脱力)けいれんなどの神経症状
・腹痛・嘔吐・下痢(吐血・下血)
・肝障害
・循環血漿量減少性ショック
・アシドーシス(血液が酸性になること)
・肺水疱(血液の液体成分が血管の外へ滲み出してしまうこと)
そして最悪死亡する事もあります。
大口病院では点滴に混入され、界面活性剤(消毒液)が直接血液に入ってしまったために、かなり重度の中毒症状により死亡したのではないかと思われます。
対処法
界面活性剤が入ったもの(洗剤やシャンプーなど)を大量に(コップ一杯以上)飲んでしまった場合は、すぐに救急病院へ搬送してもらってください。
その間牛乳や卵白を飲ませてから吐かせる(胃の洗浄)と良いようですが、その際もきちんと医師の判断を仰ぎましょう。
生活の中の界面活性剤
界面活性剤は主に石鹸やシャンプー、食器用洗剤や洗濯洗剤などに使用されていますが、他にも食品・化粧品の乳化剤・保湿剤などにも使用されているようです。
(食品だとアイスクリームやホイップ、マヨネーズなどにも使用されている場合があります)
このような事件が起きるとついつい悪いだけのもののように思えますが、界面活性剤は実は人間の体の細胞にも存在している(レシチン)物質なのです。
問題なのは高い毒性・浸透性・残留性があるもの(硫酸・スルホン酸など)ですので、そのようなものはなるべく避けられ、天然由来の物を選ぶなどすれば安心かもしれません。
意外と身近に存在している界面活性剤。
皆様も食品や化粧品を買う際には、裏の表示を見てみると良いかもしれません。